
「やさしい日本語」は「ハサミの法則」で作る
まずは基本、「ハサミの法則」を覚えましょう。
はっきり言う:はっきりと伝える。あいまいな言い方はしない。
さいごまで言う:文の終わりまで言う。言いよどみはしない。
みじかく言う:一文を短く言う。だらだらと続けない。
「は」:はっきり言う
「はっきり言う」は、相手が聞き取りやすい明瞭な発音をすることです。「ゆっくり言う」とは違います。むしろわかりにくくなるので避けましょう。論理的にもあいまいではなく、明瞭に話すことが理想です。
「おそらく」「たぶん」などのあいまいな表現も使わないようにします。
「さ」:さいごまで言う
「さいごまで言う」は、文末まではっきり言うことです。日本人特有の「〜なんですが…」のようなあいまいな表現は、日本人にしか通じません。外国人は困ってしまいますので文として最後まで言い切りましょう。
「み」:みじかく言う
一番大切なポイントが「みじかく言う」です。「やさしい日本語」はとにかく一文を短くします。長すぎると相手が理解しきれません。主語と述語を明確にして伝えましょう。「みじかく言う」を念頭に変換していくと、自然と「はっきり言う」「さいごまで言う」も上達していくのです。
「やさしい日本語」言い換えのための基本ポイント3選
「やさしい日本語」に言い換えするためのポイントを3つ紹介します。
1.敬語は使わない。「です・ます・ください」で締める
「敬語」は日本語を学習している外国人にとって、大変むずかしいものです。我々日本人も実際に社会に出てから身についていくものですよね。「いらっしゃる・おっしゃる」などの「尊敬語」、「申します」「拝見します」などの「謙譲語」。敬語は使わず、「です・ます・ください」シンプルな言葉に言い換えて話しましょう。
(変換前)何を召し上がりますか?
(変換後)何を食べますか?
(変換前)チケットを拝見します。
(変換後)チケットを見せてください。
2.漢字の言葉は使わない。和語でかんたんにする
日本語学習者にとって漢字もまたむずかしい言葉の一つです。漢字の組み合わせ、熟語もたくさんあります。「交渉」「高尚」、「保障」「補償」など同音異義語もかなり多く、音だけではわからず勘違いのもとになりかねません。したがって、漢字(音読み)の言葉を使わずに、和語(訓読み)でかんたんにしてあげるのが良いのです。
・試験を開始します → 試験を始めます
・絵を鑑賞します → 絵を見ます
3.オノマトペ(擬音語・擬態語)は使わない
「雷がごろごろ鳴っている」のような音を表す言葉は「擬音語」、「母親にいらいらしている」のような様子を表す言葉は「擬態語」です。それらを合わせて「オノマトペ」と言います。
ほかにも「ざあざあ」「すっきり」「ねばねば」「ふっくら」など、オノマトペは数えきれないくらいあります。日本では、小さい頃から各家庭の会話の中で自然に学んでいくので良いですが、外国人にとってこのオノマトペは漢字と同じくらい難しいのです。
オノマトペは日本語の表現を豊かにする言葉ですが、やさしい日本語ではオノマトペを使わず、大胆に言い換えるのが良いでしょう。
(変換前)雨がざあざあ降っています
(変換後)雨がたくさん降っています
(変換前)机をピカピカに磨いてください
(変換後)机をきれいにしてください
「やさしい日本語」気をつけるべきポイント4選
代表的なポイント3つを見てきましたが、ほかにも気をつけるべき点がいくつかあります。
1.カタカナ外来語はなるべく使わない
「トイレ」や「ラジオ」、「エレベーター」など生活の言葉は、初級の教科書で習うので大丈夫ですが、多くのカタカナ外来語は日本的英語=「和製英語」なので外国人には通じません。本当に身近な言葉以外は、使用は避けるべきですね。
2.難しい語彙は、かんたんにする
「今朝」は「今日の朝」、「夜道」は「夜の道」など、難しいと思われる言葉は分解してかんたんな語彙に言い換えたほうが伝わります。やさしくしましょう。
3.慣用句は使わない
「胸が痛む」=「つらい気持ちになる」、「耳にたこができる」=「何度も聞いて嫌になる」など、文字通りじゃない別の意味をもつ言葉は「慣用句」と言います。この「慣用句」も日本人は慣れていますが、外国人にはとてもわかりにくいものです。やさしい日本語では、慣用句は使わないのが良いでしょう。
4.二重否定は使わない
「食べないわけじゃない」「行かないわけではない」など、否定を2回繰り返す二重否定はあいまいな表現です。やさしい日本語では「食べます」「行きます」の肯定文に正して使用します。
「やさしい日本語」書き換えのためのルール2つ
「やさしい日本語」で書くときのルールです。2つ押さえておきましょう。
1.漢字にルビ(ふりがな)をつける
これは「やさしい日本語」の基本ですね。漢字の上、下、または後ろにかっこ書きでひらがなをつけます。
・地震(じしん) ・学校(がっこう) ・台風(たいふう)
2.分かち書きにする
ひらがなが多い文章は特に言葉の区切りがわかりません。文節で区切ってスペースを空けましょう。これを分かち書きと言います。
「地震(じしん)が ありました。気(き)を つけて ください」